疾走

長文ポエマー地下室バンギャル

6月28日















あなたに何を返せばいい








わたしは好きなものに寄りかかってなんとか生きてきた人間だから、「好きなものがあるのは良いことだ」と闇雲に言う。
実際にそう思っているのだけど、本来はその「好き」という感情があまりにも利己的で暴力的なものだということも、身を以て知っている。それが自分に向けられたときの強烈な嫌悪感を未だに忘れられないからだ。
だからわたしは生身の有機な人間ではなく偶像にすり替えられる「あなた」を選んだ。そしてあなたは罷り間違っても私に触れることは絶対にない。それがあまりにも楽だった。そんなに都合の良い存在は他になかった。
詰めればそういう打算があるのだけど、最初から2014年まで、諦めきれないのは今の今まで、もう何年もずっと言ってきたように、利己的で暴力的な、だけど根底にはどこにも雑じり気なんてないてこでも動かないような純粋な「好き」だけがある。
届けるつもりはなかったけれど、いつの間にか対価を求めていた浅ましさに自滅して、うっかり届いてしまったものがどうか迷惑ではなかったようにと心から願っている。

嫌なことがあると、厭になると、疲れてしまうと、どうしても他の何かでは駄目で、あなたのつくったものでなくてはいけなくなる。有り難くて、嬉しくて、わたしにとっては本当につらいことだ。
春のあまりにも憂鬱な夕方や、消えたくなるような夏の早朝、泣きたくなる秋の雨の日、全てが沈む冬の夜、ずっと、あなたがつくったものがあったから耐えられた。

あなたのおかげで怖いものが随分と減りました。

ずっと生きていることが恥ずかしかった。のうのうと生きていることが許せなかった。自分が嫌いだった。猫背が癖になっていた。誰にも顔を見せたくなかった。だから前髪をのばしていた。生まれてくるんじゃなかったなあとぼんやり思っていた。だけどcali≠gariと、あなたの作品に出会って、ようやくわたしはわたしの足で立って歩いて良いのだと考えられるようになった。背筋を伸ばして歩けるようになったし、自分の思うようにしていいのだと思えるようになった。わたしがわたしでいることを、少しだけ許せるようになったのだ。
あなたのおかげでわたしはなんとかここに立っている。あなたのおかげでまだ、ちゃんと、生きている。あなたがいて、あなたがつくったものがあって、あなたが作ってきた空間にいることが出来たから、もうぼんやりと死にたいなんてこと思わなくなったんだ。
わたしのことを助けてくれてありがとう。ずっと一緒に戦ってきてくれてありがとう。独りだったわたしを黙って見ていてくれてありがとう。わたしの大部分を背負ってくれてありがとう。くだらない人生の、それでも止まらない人生の、永い道のりを歩むための杖になってくれて本当にありがとう。だからもう、どんなにこの気持ちをやめてしまおうとしても出来ないのだ。

ずっとくだらないと思っていた。
見返りも意味も未来もないいつかごみになってしまうものなんだろうなと思っていた。
だけど結局好きだった。分かっていても諦めたくなかった。痕を見るたびにつらくなるけれどそれでも離したくないと思った。離れられなかった。回路がぶっ壊れたように奇っ怪に、寸分違わず正確に狂う様が美しかった。虚しさと孤独と、肌寒い陰と、どこか厳しさのある表情が切なかった。誰よりも優しいくせに誰よりも人を拒むような雰囲気にたまらなく焦がれた。一度すべてを失くしたような、さみしい顔が好きだった。あの言葉を語れる細胞ごと尊かった。本当に、本当に大事だった。遠いと思った。懐かしいと思った。好きだと思った。わたしの憧れのすべてだった。

ありがとう。ずっと好きでした。ありがとう。本当に大好きです。きっと永久に伝えられないけれど。

あなたにつらいことが起きませんように。あなたが安心して明日を迎えられるように。いつまでも元気でいてほしい。さみしさや孤独があなたを襲うことがありませんように。うらみたいはずなのに、やっぱりそう思わずにはいられない。あなたがちゃんと眠って起きて、毎日を過ごせますように。
ずっと、あなたがあなたを生きてくれますように。


これからもきっとわたしはあなたのつくったものを道連れに、ずっと戦っていくんです。

わたしはかつてわたしがあなたを好きでいることを喜んでほしいと思っていたけれど、本当はそうではなかった。そんなにあまいものではなかった。わたしは、わたしがあなたを好きでいることを、あなたに許してほしかった。喜んでほしいなんてかわいらしいものじゃない、もっと狡くてずっと汚い感情だった。
馬鹿みたいだ。馬鹿でしかない。どう考えたってまともじゃない。頭がおかしいとしか思えない。健全じゃあない。

だけど、だけどやっぱり、桜井青というひとと、その作品がなかったら、多分わたしはいまのわたしじゃなかったと思うのだ。
ごめんなさい。ごめんなさい。わたしはあなたにゆるしてほしい。


わたしの軌跡にあなたの作品があること。「あなた」がいること。
これはもう、消せない。永久に、変わらない。
だから今年もこうして届かないことを望みながらそれでも宛てるのだ。伝わってくれるなと思いながら叫ぶのだ。あなたが好きですと。あなたのつくったものがあるからわたしはここにいて呼吸をしている。まだあなたのつくったものをつれて往きたいと願っている。だから、やっぱり、ありがとうと。
お誕生日、おめでとう。あなたが音楽を選んでくれてよかった。あなたの作品に出逢えて、つらいこともたくさんあったのに、なのに本当に、本当によかった。


きっとこれが最後の出せない手紙です。

たぶん一生、あなたが好きです。

ずっと、ずっと好きで、そして、本当に、本当にありがとう。